第百五十三話:ひとりでできまちゅか?

最近のチョロは、暗黒騎士のレベルあげを熱心にしている。ちょっと前に熱心にあげていた赤魔道士のサポにつけたい、という気持ちからやっているものである。この暗黒騎士だが、チョロはタルタルなのでなかなかの茨の道である。でも、一般的な暗黒騎士のイメージに固執しなければ、サポを白にして豊富なMPを頼りにサブヒーラーとして動けるので、ケアルやアシッドボルトなどで補助的な役割で楽しんでいた。

LSに似たようなレベルのメンバーがたくさんいたので、みんなで一緒にPTを組んで、「全員前衛」とか「後衛黒のみ」とかのPTで、一般的な狩場とは違う変な狩場にばっかり出向いてヒャッホイしていた。

この脳筋PTのメンバーは時間を約束しているわけでもないので、なんとなく集まったら行く、という感じだった。そしてこの日も、数名はログインしているけど、まだ人数が足りないので、集まるまで別の事でもするか〜、とPorojrがやろうとしていた「ケンちゃんクエ」に参加することにしたのだった。それがすべての悪夢の始まりだった。

「ケンちゃんクエ」それはバスで受けれる護衛クエで、一時はバグでこのクエを受けると他の護衛クエが受けれなくなる、といういわくつきのクエだった。今は直っているので、長いこと放置していたこれをやってみよう、という事になったのだ。

前回釣りの護衛で痛い目にあったいるLBJだが、このケンちゃんクエはなんとレベル10制限。10に制限されるんだし、そうそう突拍子もない事は要求されないだろう、と思い、メンツが集まるまでのヒマつぶしにもってこい、の・・・はずだった。

バスの商業区で過保護なお姉さんからケンの護衛をいいつけられた。ケンは「一人でできる」と言って聞かない意固地な青年だった。「ついてくんな!」と言い張るケンを後ろから内緒で護衛する、これがケンちゃんクエの簡単な詳細である。

舞台はダングルフ。中に入ってケンに話しかけると「くんなっつっただろ!!!!」という罵声と共にレベルが制限されてスタートする。「絶対ついてくんなよ!」と捨て台詞を残して進んでいくケンに見つからないように、そして彼が死なないようについていく、という内容である。

集まったのは、Porojr、Gyaban、Choro、Deku、そしてダングルフの入り口でちょうどこのクエを受けようとやってきたはいいけど、何も情報なしで来たため、丸裸になってしまっていた暗黒騎士の方も一緒にやることになって、5人PTで挑むこととなった。

ケンは進んでいく。3国の護衛のように、対象をとめたりすることはできない。そりゃそうだ。だって内緒でついて行ってるんだから・・。すると、ケンが突然・・・

ケン「なんか気配がするな・・・」
ケン「振り返ってみるか」

えっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?(;゜ロ゜)アタフタアタフタアタフタアタフタ

ケン「おまえらっ!!!ついてくるなって言っただろっ!!!もういい!帰る!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(´ー`)帰ったで・・・・・・・・・・・・・・・・

振り返るんかいな・・・。わかったよ。やり直そう。

再びダングルフに入りなおして再開である。ここでPorojrが気づいたのが

P「護衛の最初のイベント画面で、ケンのすっごい後ろでねーちゃんがインビジしてるっ!www」

細かい所まで設定されてるのね・・・もしこれからやる人がいたら要チェキです。

こうして、ケンの後ろからついていく事数m。当然アクティブな敵にはケンも自分達も絡まれる訳で「何がアクだったっけ?」とか言いながらケンの後をつけていくと・・・・

「ケンがアクティブやね!」

ケンは視界に入ったモンスターはすべて切りかかっていく、という視覚タイプのアクティブらしい。そしてねーちゃんに「ポーションは持った?」と言われて「わかってるよ、うるせーーー!」とか言ってたくせに、まったく回復グッズを使う気配がない。最初の広場で既にHPが5割になっている。これをケアルして進む、という事なのか!!

そして、何度も「おまえらっ!!!」と言われながら検証した結果、ケンは「背後からのケアルには気づかない」という大馬鹿脳筋であることが判明した。ただし、視界に入ると、戦闘中であろうと、移動中であろうと、ブチ切れて即帰りするのだ。しかも戦闘が終わると、少し後ろまで誰もいないかチェキりにくる、という用心深い性格だった。一行は、岩の陰に隠れたり、角に隠れたりしながら、ケンの戦闘中を狙って素早くケアルをした。戦闘が終わると同時にほぼ360度のチェックが入るので、一人が敵をタゲって「敵@5割」「敵@3割、もうあかん、撤収!」などの報告を行い、その他のメンバーがケンをケアルしたり、ケンの進行方向の敵で、勝てそうな相手を処理したりしていた。

このスタイルをつかむまでに、チョロ達は既にダングルフ入り直しを5回以上していた。最初の何度かは見つかっても「アチャーー(*´Д`*)」で笑っていたが、さすがに10回を越えたあたりから飽きてきた。コツがわかってからも、ケンはものすごい奥地まで進み、しかも突き当たりの広場へいったん行ったら、引き返してくる、という最悪のコースをたどるおかげで、ケアルが追いつかず死なせてしまったり、とっさに隠れた岩陰にケンがやってきて見つけられたり・・・。おまけに迷子特性つきで、「地図を持ってきたらよかった・・・」とか泣き言を言ったり、「あれ、ここどこだ?」とグルグル見回したり、「あっちも見てみようか」などといってあらぬ方向に走り出したり、と手がつけれない。

そして「軽く終わらせる」つもりではじめたケンちゃんクエ開始から軽く3時間が経過したくらいで、一緒にやっていた暗黒騎士さんが力尽きて落ちることになった。そしていい加減イラついていた一同は、レベル制限がとけたら、そこら中の敵をしばいてケンの通り道をつくる、という作業に没頭していた。その頃には、LBJ脳筋ズのメンバーはとっくにログインし、「まだーーー???」と言いながら待っていてくれた。ケンクエメンバーのうち、Gyaban、Deku、Choroの3名が普段からLBJ脳筋ズで一緒にレベルあげをしていたので、終わるのを待っていてくれていたのだ。だけど、あまりにもクエの難易度が厳しい事が判明したので「ごめん、先に行っといて・・・」と謝り、彼らは3名でどこかのミミズ狩りに出かけていった。こっちの気持ちは焦る一方だった。レベル10制限でこんなにキツイなんて誰も想像していなかったのだ!!

失敗してレベル制限が解けてから、クエのフラグ立て直し担当の人が入り口に向かうまでの間、みんな制限されてない状態でケンの予想ルートの敵を少しずつ処理したりしていたが、ケンの行動範囲は結構広く再ポップしてしまうので、やっぱりケンにケアルをかけ続けなくてはいけない。そして見つかってしまうのだ。本当にシビアな視覚感知範囲で、かなり疲労の色が濃くなってきた。見つかってしまった人は「マジごめん・・・・・_(._.)_」と本気で凹むくらいの精神状況になってきていたのだ。

そしてとうとうDekuがキレた。

D「ジョブ変えてくる。入り口から全部引っ張って一気に殺す!!!!」

最初Dekuは、自分はクエクリアはもういいから制限受けずにケン周りを掃除する、と言っていたのだが、ここまできて誰かをおいてクリアするのはマッピラである。制限は全員が受けた状態で進みたい。だけど、もう「見つかるかな?どうかな?」で再チャレンジを続ける気力は残っていなかった。

Dekuがシーフにジョブチェンジに行っている間に、赤で来ていたGyabanも敵を集める作業をしていた。もしダングルフがレベルあげに人気のエリアだったら、確実にGMコールされるであろう光景が広がっていた。ケンの歩くルートの敵をすべてリンクさせて寄せ集めるガルカ。チョロは白で行っていたが、レベルがGyabanより20低い上に装備がコック服のみ、でGyabanのHPの減り具合と自分とのレベル差を考えると、自分がやると死んでしまいそうなので、Gyabanが寄せ漏らした数匹だけを連れて行ったりしていた。そしてDekuが到着し、もう一度最後にケンのルートを一周し、ほぼ取り残しのない状態で広場に集め、Porojrは入り口でケンをポップさせ、話しかけたらレベル制限がかかりクエスタート、という万全の状態で、GyabanとDekuの範囲WSとGyabanのガー系精霊魔法で敵を一掃した。

「いくどーーー!これでアカンかったらもう知らん!!!!!!!」

バシュン、とレベル制限がかかり、ケンはスタートした。彼の行く先には敵はいないはずである。3名は絶対見つからない場所に集まり、Porojrだけが万一のケアルのために、かなりの距離をおいて、ケンの姿が見えるけど、タゲれないくらいの位置でついていっていた。

順調だった。掃除は万全だった。彼は順調に測量をし、順調に迷子になり、順調に愚痴を言いながら進んでいった。そして、唯一の気がかりな最後の広場へ突入した。気がかりな広場。そこにはリンクさせることのできなかった敵、ミミズがいるのだ。

案の定ミミズに殴りかかるケン。減っていくHP。でもケンもめちゃくちゃひ弱なわけではないので、みんなハラハラしながらPorojrの報告を待っていた。そしてとうとう、今まで進むことが出来ていなかったミミズの広場を通過した。グルっと一周しているので。次の広場はケンが入り口から最初にきた広場である。きっとそこを抜けて入り口に向かってゴールのはず!

最初の広場には道が2本あり、ケンは最初は西に出ている通路を通って奥へ行く。そして一周して南に向かって出ている通路を通って帰ってくるのである。そしてChoroとGyabanは、もうこっちにはこないであろう、西に出ている通路に待機して、ケンが通り過ぎるのを見守ろうとしていた。そのとき・・・

P「ちょ、そっちいっやって!ハゲ!アカンぬいげてーーーーーーー!!」

ケンの迷子アビ、ここで最後の発動!!!GyabanとChoroが待機している通路に向かってケンが颯爽と走ってくるではないか!!!

!!!!!!!!!!!(゜△゜;)

二人は慌てふためいて一目散に後ろに駆け出した。いったいどこまでこっちに来る気なんだ!!!!そしてケンは、西の通路の曲がり角くらいに来たところで

ケン「アレ?ここは最初に来たところだな・・・」

とつぶやき、戻っていった。最後の最後までビックリさせてくれるじゃねーかよ!おい!

そしてその後は、順調に来た道を戻り(っていうか一本道)入り口についたところで、ねーちゃんがインビジをといて姿を現した。

姉「無事に終わったようですね。実は私もコッソリ後をつけていたんですよ」

だったらうちらを呼ぶな!!!!!!!!!!!!!!!!殺すぞ!ヽ(`Д´)ノ

開始からゆうに5時間以上をかけてやっとクリアである。疲労困憊の一行は、護衛の報酬をもらいにバスへ向かった。

商業区でのんきにたたずんでいる兄弟に話しかけ、さらにムカつきが増すセリフを耳にした後、全員、呆然となった。

ではこれが報酬です。
Choroは1500Gを手に入れた。

あれっ?・・・・・・・・・・・・・・アレッ?($・・)

まだあるでしょ?ほら、ランペール戦記とかミラテテ様のアレとかさ?ちょっとした経験値の貯金に使えるアレよ。アレがもらえなかったら護衛やる意味がないじゃない?ね?お姉さん?

しばくど、オラーーーーーーーーーーーーーヽ(`Д´)ノヽ(`Д´)ノヽ(`Д´)ノ

なんと、この護衛クエストは1500Gの報酬のみ、で終わる、というクエストだったのだ。あの難易度で?こんだけ?いや、面白かったけどさ、難しすぎて最後飽きたやん?レベル10で気軽にいける、っていう難易度なら経験値アイテムなし、ってのもわかるよ?でも、明らかにそれじゃ無理やん?メインレベル10の人があのアイテム貰えちゃったら、それでレベルあげ出来ちゃうからマズいって?ていうか、オマエらが下手くそなだけだって?
あら、そう・・・・それなら仕方ないですね^^^^;;;;;;;

なんだか騙されたような非常にモヤモヤした気分を抱えて、ケンちゃんクエは終了した。開始からトータルで6時間ほどかかっていた。ハッキリ言おう。

も う 2 度 と や ん ね ぇ ぇ ぇ え え ぇ ! ('Д')

アットワのミミズ相手に3人でチョコチョコ狩りをしていたLBJ脳筋ズに土下座状態で合流して、ちょっとだけ暗黒騎士のレベルあげをして、今日のチョロ・ログアウト。




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