第百五十一話:LOSTexp:突入編

初めての総指揮に緊張しまくりのPorojr。パソコンの周りに今さっきプリントアウトしたばかりの紙を撒き散らす我が家。サンドリアの予習しかしていなかったので、本当にテンパっていた。

ところがフタを開けてみると、なんと素晴らしい戦力が集まった事だろう!と感動しっぱなしだった。Porojrが「今のリンク余裕なのか、じゃあもうちょっとペースあげよう」とつぶやいているのを何度聞いたかわからない。

ジュノは階段の上から下のPTの様子が見えるのも、初めての指揮のポロには助かった様子だった。でも、戦力だけじゃない、素晴らしいのはメンバーみんなの本質だった。初めての指揮者に「ここはもっとこうしろよ」とアドバイスした点も山ほどあったと思うのに、その場でそれを言おうとする人は誰も居なかった。終わってから、「こういう所がこうしてほしかった」と報告してくれた。現場で言われても焦るだけだったろう、と思う。その場で言わないといけない、的確なアドバイスだけが飛び、必要な報告がキチンとなされ、そして「本当にさばけているの?」という数を後ろに流しても「処理完了」という頼もしい報告が返ってきた。

チョロは黒魔道士なので石像を撃破するPTに入っていた。総指揮であるPorojrと同じアライアンスで先頭なので、後ろの様子はどちらの画面をみても、サッパリわかっていなかった。最初は、同時に2つの画面を見れる利点を生かしてチョロを後ろに配置する、というのも考えていたのだけど、「PT内で意見を言い合いやすい環境をつくる」という目的のために、できるだけLS同士、フレンド同士、が同じPTになるPT編成を行った関係で、最後尾PTの黒魔道士はチョロではなくなったのである。

そして、なんとか時間延長も全て取り、ボスをポップさせるNMもやや半壊になりながらも倒し、いざボスへ。ここまでの過程で、経験者のKujyaから、たくさんの裏tellをもらって参考にしていた。

K「そこのやつ倒したら、後ろリポップだったと思う」
C「マジデ?!この動いてるのじゃないよね?」
K「名前違うからわかるはず。偉そうなやつw」
C「オッケー!伝えるわ!」

ち「そこの奥倒したら、後ろに沸くらしいよ」
ぽ「うそん・・・・そんなん書いてないやん・・・ガサゴソ」

ぽ「競売下にもNMいるな。あれもボス出すのにいるのかな」
C>>Kujya「競売下のNMってやらないとあかんの?」
K「それ、罠。」
C「オッケー!伝えるわ!」

なんて会話が我が家でなされていたのは、ヒミツである。こうやってLS会話ではなく、しかも指揮をしているのではないチョロにtellでアドバイスを送ってくるあたりが、リーダーに適しているくせにリーダーは嫌うLBJの参謀、Kujyaならではのアドバイス。LS会話で流しても、テンパって見ていない、スルーしてしまうかも知れないポロチョロの性格を見越して、あらかじめ知っておかないと危ないアドバイスだけ確実に伝わる方法で伝えてきてくれたのである。全員が初めてなら、罠に突撃してアヒャーでもいいけれど、せっかく経験者がいるなら、避けれるならば避けたい。一発で壊滅に追い込まれる罠だけは教えておこう、ときっと思ったんだろう、と思う。初陣を成功させたい、と願っている主催の気持ちも十分に理解していたんだろう、と思う。

こうして、何とかあとはボスだけ!という場面まで持ち込むことが出来たのだ。ここに来るまでにAFが数種類とレリックがドロップしていて、ぶっちゃけチョロは、よくやったほうなんじゃないかな、と思っていた。全くの初めてのエリアでボス前まで進めた事が既に感激だったのだ。

でも、Porojrはここまできたからにはクリアしたい!と燃えていた。チョロもそう思うけど、気持ちだけが空回りして、なにも出来る事がなかった。

ボスは、たくさんのお供と共にポップする。そのお供を掃除していては、とても時間が足りないし、メチャクチャなリンクになるから、シーフやナイトが無敵アビを使用し、囮としてお供ごと連れて行って、その囮が死亡するまでに別の誰かが後ろからボスだけに敵対行動をとり、引っこ抜く。という「囮釣り」が裏世界でボスと戦う場面において有効な手段とされているらしい。そして、その場面となったのだけど・・・・

1回目・・・バインドで即死。
2回目・・・ボスは少し動くものの、死亡。
囮役に説明に説明をこらした3回目・・・説明がイマイチ伝わってなかったらしく、不発。

2hアビのあるシーフとナイトがこれで全滅となり、Porojrはすっかり落ち込んで「もうあかんわ・・・・・・・・」と半泣きになっていた。おまけに時間もかなりせまっていて、占有時間はあと8分を切っていた。

その時、最初に死んですぐHPに戻り帰ってきていたシーフの衰弱が治った。そのシーフが言い放った。

「このままモタモタしてても無駄だしやるだけやる!」

弱気になっているPorojrにハッパをかけたそのシーフは、絶対回避もないまま、空蝉とトンズラだけで敵の群れに突っ込んだ。チョロはポロに「ほら!頑張ろう!ボス動いたよー!!!」と応援する事しかできなかった。

3回の失敗は無駄ではなく、すこしずつ動いてバラけていた敵が、バラバラに動き出したのが幸いしたのか、奇跡的にシーフが生きたままボスが動き出した。Porojrはボスをターゲットしたままその後ろにダッシュし、最後の力を振り絞ってフラッシュを放った。

シーフが死ぬのとPorojrボスを抜いたのは、本当に1秒の差もなかったように見えた。でも、その1秒以下の奇跡のスキマがPorojrがボスを釣った時に他のお供のヘイトを稼ぐのを防いだのだった。

こうして占有時間後5分を切っているかどうか、くらいの状態でボスを抜くのに成功したのである。

C「抜いたよーーーーー!!!!!」

LSに報告し、宮殿の中でヤキモキしていた一同は、ここぞとばかりに到着したボスに殴りかかった。なぜかついてきていた敵の召喚獣、ラムウには焦ったけど・・・

この直前のtellで、ボスを倒すと、エリアに突入したモグハウス前にもたくさんの敵がリポップする事をKujyaから聞いていた。しかも、残り時間も全然ない。チョロは慌ててLSに叫んだ。

C「今死んでいる人!ボスが死ぬ前にHPに戻って宮殿に戻ってーー!!!」

何度も何度もこれを叫んだ。でないとクリアの証を取れなくなってしまう。犠牲となって死んだのに、それではあんまりである。

そして、みんなの猛攻撃により、ボスは撃沈された。そしてその瞬間・・・・

このエリアの占有時間が30分延長されました。

?!?!えっ・・・・・・?

K「ごめん、これ素で忘れてたわw」

なんと!ボスを倒すと延長されるとは!でもこれで現場で死んでいる人にはゆっくりレイズができる!囮現場で死んでいる人には、30分でリポップしている敵を縫って蘇生作業をしてクリアの証を取るのはきついだろうから、さっきのHPに戻ってくれ、っていう叫びは有効だったはず。だけど・・・宮殿内で死んでて戻った人いたら、経験値大損させてしまったな・・・・・でも、知らなかったんだもん・・・・

そんなこんなで、LOSTexpの初陣は、エリア変更、というハプニングを乗り越えてなんとクリアで飾る事が出来たのである!チョロはもう本当に本当に感激して、ちょっと泣きそうだった。そして、残った時間でAF取りをしよう、となった。先頭が敵を釣ったログが出た瞬間くらいにKujyaから

K「ボス倒した後はAFドロップあがりますけど、敵の配置も、石像を釣って出る獣人の数も、強さも、きつくなってるんですよね」

とtellが来た・・・・・と思ったらありえない数の敵がキタ━━━━━━━━ ! !

どうもこうも出来ない数の敵が宮殿内に乗り込んできて、一同は大爆笑しながら全滅した。クリアしたことで盛り上がっていた一同は、この全滅も楽しくて仕方なかった・・・・よね?

「順調すぎておかしいと思ったわーーーーー」
「わざとじゃないよ!わざとじゃないよ!」
「ウソつけ!壮大な釣りじゃないのか!」
「ボス倒すと、配置も強さもキツくなる・・んです( ´ー`)」
「エリアから放り出されてジュノモグ前に死体こんだけ飛び出して、つけてるLS全員LOSTexpってウケる!」
「好きで死んでると思われてレイズもらえねーーー」

結果的にはリレイズのかかっていた白魔道士が起き上がり、数名は起こした状態で、みんなエリアから放り出された。

ジュノを既にクリアしてる人も大勢いたけど、みんなLOSTexpとしての初陣の成功を心から喜んでくれていた。「知らない人ばかり」と失礼な気持ちでいたLOSTexpのメンバー達は、本当に全員が前向きに協力してくれる人ばかりで、心強かった。自分が信頼しているLBJメンバーであり、フレンドのLSであり、紹介であるんだから、人間関係やよく聞く悩みなんかで不安に思って心配することなんてない!と頭では思っていても、内心は不安だった。でも、本当に心配することなんてなかった!っていう事実が、これほどまで形となって目に見えたら、感激せずにいられますか?

「大人数で知らない人ばかり」だなんて思っていた事が失礼すぎて恥ずかしい。このメンバーなら、成功だけでなく失敗も共にできるメンバーだ、と確信した。終わってからは、感動したのと、今日までずっと気を張り詰めていたのが、プツンと途切れた感じで、なんだかホっとしてボケーとしていた。

これからのLOSTexpの成長が本当に楽しみになって、今日のチョロ・ログアウト。




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