第百四十二話:白虎リベンジ

暴れまくり、やりたい放題やられたあの白虎との対決から数週間がすぎた。ウルトラマン計画は、静かに、だけど熱く進められていった。

ウルトラマン計画のために必要不可欠なもの、それは連続魔スタン。LBJで白虎と対決できる赤魔道士のうちのQuinは、その計画のために突っ走っていた。暗黒騎士のレベル上げのために毎日緑のサチコメを書いて、各地で頑張るQuinの姿があった。レベルアップスピードは、LSナンバー1の彼女。驚異的なスピードで計画の完成は近づいていった。

そして、時は来た。Quinからの準備完了!のお知らせ。LSメッセに書き込まれたリベンジの告知に、全員が静かに闘志を燃やしていた。

前回敗退した時に全員が感じた事のうちの1つに、「長期戦じゃ無理だ」というものがあった。そして、相手の攻撃が強烈すぎて、どうしても死者が多くでるため、ヘイトのリセットがかかり、後衛にターゲットが行く事を余儀なくされる。虎が縦横無尽に走りだしたら、それはもう敗北を意味するのである。

他にも、二人のナイトに固定しようとしていたが、できるだけターゲットはまわした方がいい、という事も、前衛達の間の一致している意見だった。そこで提案されたのが、最初は冗談で言っていたけど、あれ?ホントにいいんじゃないの?それ。という結果となったウルトラマン作戦なのである。

キーパーソンは4人。Kiryu(ナイト)、Gato(ナイト)、Quin(赤)、Bibby(赤)。

二人の赤魔道士の連続魔スタン、二人のナイトのインビンジブル。この4つを使って、空白の時間を作ろう、という作戦である。最大で4分、空白の時間ができる。まぁ、そこまで上手くはいかないとしても、その空白の数分間の間に、ヘイトを稼ぐ事を気にせず、入れれるだけのダメージを叩き込み、そしてその後は・・・・・・・・・・・・シラナイ( ´ー`)y−~~  という作戦である。

いつもは気孔弾の砲台として参加していたモンクも、今日ばかりは武器を揃えて百烈拳の準備である。戦士のマイティーも、黒の泉も、召喚士のアストラルも、全ての火力をその空白に注ぎ込む作戦なのである。

余談だが、チョロは今まで「魔力の泉」をMPが豊富にある時に使ったことはなかった。最初にHayatoにこの作戦を聞いた時、少し驚いた。いつもはMPがなくなってからのココ一番で使っていたからである。でも、今回で、2つ目の、というかこっちが本来の使い方なのかな、とも思った。ヘイトを稼ぎすぎる事を気にせず(というか、死ぬつもりで)連続して精霊を使う、待機時間なしにMPを使い続ける時にこそ、魔力の泉は有効であるのかな、と思ったのである。そして考えてMPを使わないといけない時には、消費するけど時間制限はない自分のMPを使う。今まで気づかなかったのが、少し恥ずかしい気がした。こういう特殊な戦闘のみの使い方かもしれないけど、ひとつ進歩した気がした。

当日の夕方ログインしたチョロは、今日、この決戦に、みんなに食べて欲しいメニューを考えた。ナイトにはシーフードシチュー。忍者には、頑張ってナヴァランのHQを狙おう。戦士、狩人、モンク、侍、暗黒などのアタッカーにはイエローカレーはどうだろうか。白魔道士には、やっぱりロランパイ?今回の赤魔道士には、なにが一番いいのかなぁ・・・。

色々考えて、とりあえず前衛用の食事を作る事にした。丁度満月で、ナヴァランHQを狙うのに絶好である。結局1D分つくって2つ作る事ができた。参加予定の忍者はふたりなので、ちょうどいい!倉庫をかけめぐって、シチュー、カレーを作っていると、驚くほど時間がたっていて、急がないと本番に遅刻してしまいそうになってしまった。しかも全ての料理がスタック不可なため、魔道士用の食事は諦めることにした。カレーをいくつ作れば足りるのか、まだメンツが決まってなくてわからなかったので、もてるだけ作った。他のみんなも万全の準備をしていて、緊張感が高まっていった。

集まったメンバーは22名だった。悔し涙を飲んだあの場所で円陣を組んで、長いこと作戦会議をした。出来れば連携もしよう。インビンジブルと連続魔スタンをどういう順番で使うか。みんなの2Hアビの使いどころはどうしようか。みんなが一生懸命考えて、そして作戦は決定した。

最初に使うのはGatoのインビンジブル。そしてそれを確認して、すぐにQuinの連続魔スタン、Quinの連続魔が終わったら、Bibbyが引継ぎ、そしてKiryuのインビンジブルでトラのターゲットをなんとかその場に固定できたら・・・・・いいなぁ(`・ω・´)

TPは全員当然300%貯まっているので、ペアを決めて連携を決めた。MBも頑張って決めよう。4名は最初は入れないので、誰かが死んだら入れ替える。とにかく最初にどれだけ削れるかが勝負である。何度も作戦を確認して、そしてリベンジはスタートした。

アノ場所に、あのトラが現れた。即座に発動する連続魔。すぐに始まる連携にむけて、チョロも泉の準備をした。そこへBaphometの「はずしたーーーーーーーーーー」という叫び声が響き渡る。鬼の回避の白虎。WSが中々当たらない。連携失敗となりパニクるUluz。続くErryのWSも当たらず、虎の恐ろしさを再確認する結果となってしまった。Kujyaのだしたフェンリルが、白虎にむかって飛んでいく。Kujyaの「にゃーーーーーー」という泣き声が聞こえた。虎が高速で移動して、履行がはずれたのだろうか・・・?何もかもが遠くて見えない。もどかしいのと自分が必死なのが重なって本当にテンパっていた。

その時、アッという声をあげるヒマもなくQuinのHPバーがなくなった。なにが起こったのかもわからない。即座に連続魔を引き継いで発動するBibbyの姿だけが見えた。

本当は連携スタートと同時に泉を使うつもりだったけど、違う局面になって、慌てた。でも、今しかない。Bibbyが止めている間に!魔力の泉を発動させて、一番効きそうな範囲精霊を無我夢中で撃った。驚くほど長く感じた。Bibbyが殴られながら何故か耐えている。どうしてだ、タルタルのくせに!そして、期待していたほぼ予定通りの時間くらいは白虎を足止めすることができた。みんながどんな活躍をしていたのか、ハッキリいって覚えていない。

さぁ、ここからどれだけ粘れるかが勝利のカギだ。2次メンバーも控えている。TPを持ったままのメンバーが希望を出したまま待っているのがもったいない。必死で外部ケアルをする暗黒騎士Tokiwaの姿が見えて、隣のPorojrに「入れていかないともったいないよ!」と怒鳴った。Porojrがメンバー入れ替えの担当をしていたからだ。「わかってるよ!」とPorojrも言っていた。でも、死者との入れ替えを決めていたので、誰かの死に待ち・・?みたいな状況になっていた。既に何名かは入れ替わって活躍していたが、強い攻撃を持つTokiwaが外からケアルしている姿がチョロには耐えられなかった。

その時、連続魔スタンを終えたBibbyが白虎にタゲられ崩れ落ちた。Bibby!よくやった!!!素晴らしい活躍だった!ビビーが死んだので、ビビーとトキワを入れ替えれる。ビビーが死んだ瞬間、Porojrが「よし・・・」とつぶやいたのをチョロは聞き逃さなかった。本人は後から「ビビーが死んだのがよし、じゃなくて、ほらいけートキワ!って意味やろ!」と言い訳していたが、チョロは今でもビビーが死んで思わず出た言葉ではないか、と疑っている・・・・・。

Tokiwaは颯爽とかけていった。白虎に向かって。そして渾身のWSを叩き込み、そしてブラッドウエポンを発動し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・死んだ?!

突撃男、Tokiwaの死は早かった。こんなに美味しくていいのか?!

ウルトラマン作戦が終わってからの状況は、正直あんまり覚えていない。自分の行動でさえ、である。とりあえずパラナを頑張ったことと、あと、印象的なのは、ケアルをほとんどしていない。1回目の白虎の前情報では、「精霊は効かない」と聞いていたので、ほとんど精霊は使わなかった。でも、今回は、勝利経験者のHayatoから「いや、そこそこ通るよ」といわれていたのと、白虎は「精霊が効かない」んじゃなく「何も効かない」んだとわかったからだ。

白虎のHPはジワジワ減って行った。メンバーの入れ替え担当をしていたPorojrの後日談は「18人では勝てなかった。今回ほど、死んでも死んでも、あぁ、まだこんなにメンバーがいる!ってウレシかったことはない」と語っていた。それくらいLBJはしつこかった。粘った。前回早くに崩れ落ちて、悔しがっていたGatoさんは、今回白虎にかなり長いことタゲられながら、脅威の固さを見せていた。後ろから支援する白魔道士達の的確な回復に助けられ、横から飛んでくる絶妙のスタンに助けられながら、Gatoさんは、「今回は粘れてうれしかった」と語るほどに耐えていた。普段は忍盾の凡庸性の高さにちょっとネガティブ気味なガトさんだけど、今日ばかりは自分の固さを自分で実感できた様子だった。

「インビンきたーーーー」
「影縫い!影縫い」
「はなれてーーーー」

白虎のアビを影縫いでしのごうかと思ったが、咄嗟の事で、手がでてしまった模様である。残念ながら白虎はそのまま暴れていた。

それでも、白虎もしつこかった。あとほんの少しのところで、戦力はほぼ壊滅。MPもない。でも、今盾を殺すわけにはいかない!今倒れるわけにはいかない!

チョロはカバンの中に、以前なにかのNMからドロップしてロット勝ちしたバイルエリクサーを入れていた。どういうタイミングで使う物か、あまり知らなかったけど、きっと今のはず!エリクサーを飲んで、MPを復活させ、瀕死の前衛のHPを少し戻してから、もう一度精霊を撃った。いきているメンツも、みんな普段使っている所を見た事も無いような薬をガブガブ飲んでいた。遠くでObsidianの最終コンボのアビ発動の音が聞こえていた。みんなが走り回っていて、そこら中に死体があって・・・・・でも白虎のHPは、もう1mmを切っていた。

P「ここまできて負けるのか・・・・・・・・・っ?!」

隣からPorojrのつぶやきとも唸り声とも聞こえる声が聞こえてきた。本当に一瞬そう思った。あと少しなのに、絶望的な壊滅状態だった。出来る事はしたい、でももうなにもできない。この精霊を撃ち終わったら、もうチョロにはヒーリングしかできることが無い・・・・・!その時遠くの白虎の頭上に闇連携のエフェクトが出ているのがみえた。この局面で誰かが連携を決めたらしい。そして、PTを抜けてヒーリングしていたKujyaの「PTいれてーーー」という声が聞こえた。KujyaがPTに入った、と思ったと同時にタイタンが登場していた。そして、タイタンの腕が振りあがった、と思ったら・・・・・・

白虎は、なにかをつぶやき、そして戦利品のログがダダダダーっと流れた。しばらく放心していた。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「やったーーーーやったどーーーーーーーーーーーーーーーーー」
「うわああああああああああああああああああああああ」

色々な絶叫が聞こえて、LBJはとうとう白虎に勝利したのだ!!!!!!生存者より死者のほうが多かった。それでもみんな興奮していた。トドメを刺したのはなんとタイタン君。正直勝てる勝算は少なかったこの敵に打ち勝ったのだ!みんなの喜びはハンパじゃなかった。

戦利品は印章と遠隔アイテムと、そして海王の免罪符、ベヒーモスの皮、がでた。海王の免罪符は、事前ロットでDekuがもらうこととなっていた。ベヒ皮は、みんなでランダムして、なんとGapuelがミラクル999を出してゲットした。

こうして、LBJは、とうとう麒麟への挑戦権を手に入れた。麒麟はまだとても勝てる相手ではないかもしれない。でも、現状で最強と言われているNMへの挑戦権を手に入れたことは、みんなの自信につながったとおもう。

後からまた元気なメンバーでトリガーとりをしているときに、「チョロ、興奮してて遠くてみんなの活躍がちゃんと見えなかったから、オレ、私はこんなことしたよ!っての教えて〜」と言って見た。すると、みんなが口をそろえて「オレ、私は、こんなにヘボかった」という話しかしない。スピを打ち込んでブラポンを発動したら、1回も殴れず死亡したというトキワの話。タゲを取れたと思ったら、次の瞬間には死んでいた、というバフォメットの話。スピでしか貢献できていない、と言い張るアオイ。そして、実はチョロも、後から残っている分の過去ログを見てわかったのだが、精霊魔法は全てレジストされていた・・・・(´・ω・`)  膨大なMPを消費して、2ケタとかのダメージしか与えていなかったのだ。最中はダメージを見ている余裕もないし、気づかなかったけど、終わってからみてみると、チョロは、全ての与ダメを合計しても前衛の最初のスピ一発分さえ与えていないんじゃないかな、と思う。というわけで、「うへぇ・・自分、お荷物ぅ・・・」と内心思いながら、恥ずかしすぎて黙っていたのだ。

でも、みんなの思い出を聞くと、みんなが「自分はダメだった」と発言する。(全員に聞いたわけじゃないけど、聞いた人は)でも勝てた。みんなダメだったのに、勝てた。ということは、その「ダメだった」小さな努力の積み重ねでLBJはきっと白虎に勝ったのだ。MP300以上使って、ダメージ2ケタだったかもしれないけど、その2ケタも、ちりも積もればのちりの中のひとつなのだ、と思った。誰か一人がドドーーンと活躍したのではなく、今日のメンバーの誰か一人かけていても勝てなかったんじゃないかな、と思う。

勝利の余韻に酔いしれて、いくつかトリガーも再びゲットし、超大満足で今日のチョロ・ログアウト。




前へ
戻る
次へ