第百十話:時々2〜8回攻撃・・?

LS内に1個しかないアイテムで、LBJで大人気のアイテムがある。それは

クラーケンクラブ  D11 時々2〜8回攻撃

という、一見して、完全にお遊びのようなアイテムである。

このアイテムを、はるか昔に、遊び気分で100万Gで競売から購入したのが、LBJきっての商人、Koaraである。

Koaraは過去、まだ若かりし頃、シェルイヤリングの輸入に目をつけ、ウィンダスをサンドリアを往復するところからはじめた、プロの商人である。コツコツためたお金で、好きな防具を買って遊んでいるのだけど、このクラーケンクラブの「時々2〜8回攻撃」は恐ろしいものなのだ。

まず、「時々」っていうか、ほぼ毎回、複数攻撃が発動している。ハタから見ていてどういう状態かというと、まさに「殴りっぱなし」なのである。魔法を唱えるモーションも見えないくらい殴りっぱなし。

で、これが超強い武器、とかだと、とんでもないことになるのだろうけど、D11の片手棍、といのがミソである。刃物じゃないので、殴った時の音は「バスン、バスン」で、形も平べったいタイプの片手棍。初めて使っているところをみて、LBJでついたアダ名は「布団たたき」だった。

その後、「タコ足」の愛称で親しまれるようになったこの武器は、Dこそ弱いものの、殴りっぱなしという強さ、見た目の楽しさ、TPがすごい勢いで貯まるため、WSが何度も撃てる、という楽しみから、LS内で大人気、貸し出し希望殺到、の武器となったのだ。現在白魔道士が高レベルで覚える、とても強いという噂のWS「ヘキサストライク」をこれで連発したら、いったいどうなってしまうのか、ちょっと恐ろしい感じである。

いくらKoaraがお金持ちとはいえ、大金を投じて購入した武器を、いつも借りっぱなしでは申し訳ないし、自分で取りに行きたいね!という話も出ていた。

そしてある日、ヒマレンジャー達はオンゾゾに集結し、このクラーケンクラブを出すNM「Lord Of Onzozo」を狩りに行ったのである。

目的のNMは抽選ポップ、という、普通のタコを倒していたら、抽選でNMに変わる、というシステムで沸くNMで、その抽選は、24時間、とも3日とも噂されていた。なので、狩っていても沸かない可能性のほうが大きいのだ。でも、「沸かない可能性のほうが大きいNM」 にことごとく遭遇してきたLBJである。「今日が沸く日だ」とかは知らずに、なんの根拠もなくNM狩りに出かけるのもLBJである。

一同は、クエアイテムを出す、ワイバーンという竜を倒しながら、Obsidianの広域スキャンに、抽選対称のタコが表示されたら、タイマン大好きTokiwaが颯爽と倒しにいって、抽選を待つ、というやり方で、NMの登場を待っていた。でもまぁ、ホントに沸くとは思ってなくて、ほとんどヒマつぶしの状態だった。

何匹目かのワイバーンを倒して、休んでいる時、Obsidian発見マクロで叫んだ。

[広域] Lord of onzozo [広域]

キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!

一同は不必要なくらい慌てていた。ソロで動くとからまれてしまうエリアである。うかつに動けないけど、取られたら悔しい!だって、Tokiwaが何度も往復して、死にかけながらタコを倒して、やっと沸いたNMなのである!しかも、かなり抽選時間の長い、珍しいNMのはずなのだ。

「これ専用のLSがあるらしいです」

シーフのDekuがつぶやいた。なにーーーー?!でも、エリアサーチでは、レベルあげPTしかいない様子。すぐには取られないはずである。現在集まっているのは、LBJの60代メンバーが10名ちょい。そのNMの強さはサッパリわからない。とりあえずやってみるしかない!

MGS魔法をかけて、それぞれに現地へ向かう一行。

周りの雑魚を掃除して、取られてはなるものか、とPorojrが試しにララバイで寝かせてみる。
寝ない・・・・・ソウルボイスを使っても寝ない・・・これは・・寝ないNMらしい。

ものすごい攻撃力で、まだ到着していないチョロの目には、どんどん減っていくPTメンバーのHPバーだけがうつっていた。やっと到着した時には、数名が死亡し、とりあえず撤退の状況になっていた。慌ててエスケプを発動。なんとか全滅は免れた。

「援軍を呼ぼうよ!!」

このメンバーでは倒す事が出来ない、と判断した一同はLSに呼びかけた。

「ヒマレンジャー、オンゾゾ集合!オンゾゾ集合!」
「タコ足NMポップ!!!」

そして、LBJの高レベルメンバー達が、続々とオンゾゾに集まることとなった。白がGapuel一人なので、テレポで送迎を繰り返し、フルアラ寸前、という数が集まった。と、そこでオンゾゾに残っているメンバーからの報告が入った。

「だれかきた・・・」
「発見 →→ ○○(名前)」
「あ、その人HNMLSの人ですよ」

どうやら、HNMLSらしきLSがこのNMが沸いたのをキャッチしてしまった様子である。ひえ〜〜〜・・・相手はレベルもきっと60代後半だし、手際もいいだろうし、なにもかもの準備が負けてそう・・・でも、せっかくTokiwaが頑張って通って沸かせたNMなのだから、絶対戦いたい!!

メンバーは慌てて現地向かった。現地では、やってきたそのLSの人に「こっちも人を呼んでます」と宣言されてしまったらしい。ダメとも言えないし、急ぐしかない!しかしLBJはそんなすごいLSの人と取り合うようなNMと対決するのは初めてである。全員が興奮してテンパっていた。みんなが思っていた事は「取られたくない・・・」という事だっただろう。

現地にやっと全員が到着したばっかりの時、向こうのLSの人が「すみませんが、こちらも人集まります」と言われてしまった。もう集まった、という事なの?ヽ(´Д `;)ノでも、こっちも集まった!!

作戦を練る時間もなく、みんなが口々に作戦らしきものを口走って、慌しく戦闘は始まった。Gapuelのサポ召喚で、真空の鎧を前衛にかけてから、Porojrの歌を聞くためにPTを入れ替わる、という作戦が一応あったのだけど、みんなテンパって上手く行かず、タコの激しい範囲魔法で、前衛のHPは見る見る削られていってしまった。やっとPT入れ替えができた頃には、もうほとんど全員瀕死の状態になってしまっていた。

それでも、タコのHPは半分近く削れている。戦力的に勝てない相手ではない!しかし、敵の攻撃で、状態異常になった人を回復できるのが、たった二人。前衛PTにケアルガがなく、個別の回復しか出来ない、など、PT編成の穴が露呈し、どんどん崩されていってしまった。

結局、敵のHPを半分削ったところで、最後の一人が倒され、全滅してしまった・・・。

LBJを倒したタコは黄色ネームになり、HPが半分減ったタコと、そこで見ていたLSが戦い始めた・・・・・(´・ω・`)

なんとも、みじめな瞬間だった・・・。初めての強敵に興奮し、盛り上がったけれど、「取られてしまう焦り」に負けて、慌しく戦闘開始して、全滅。  結局、もう一つのLSに、弱ったタコを差し出したような状態になってしまった。でも、負けてしまったのは、他でもない自分達の責任なので、せめて次の為の勉強に!と、そのLSがタコと戦っているのをみんなで見ていた。

よく見てみると、向こうは10名くらいしか人数がいない。そんな少人数でいけるのか〜!レベルが高いのかな?と戦闘を見ていると、ハイポーションはもちろん、パイルエリクサー、アクアムスルス等、「こんな高い薬、誰が使うの〜?」と競売で見たことしかないような薬を、惜しげもなくジャンジャン使っている。

「すごい・・・・・・・・」
「なんていうか・・・さすが手際いいね」

何を準備すればいいのか、わかっている、という感じだった。「もう今で20万くらい薬使ってる・・・」と貧乏くさい計算まで始めていた。慣れている人は違うな〜〜という、経験の差、そして財力の差、をあからさまに見せ付けられた感じがして、「これほどの準備が必要だったなら、ちゃんと落ち着いて作戦してても、ダメだったかもしれないね〜〜・・・」等と話していた。

ところが、こっちの気持ちが一段落するくらいの時間がたっても、まだタコとの戦闘が終わらない。タコはフラッドなどの古代魔法も唱えていて、何度か氷柱が立ったりしていた。「すごい攻撃力だなぁ・・」というのは見えていたけど、なんせこっちは全滅なので、相手の戦局が全く見えない。そして、しばらくしたとき、女神の祝福の音が聞こえてきた。

「強いねぇ・・・・・・」

向こうもギリギリの戦闘なのだろうか。そして、しばらくすると、ナイトらしき人がタコに倒されたのが見えた。みんなが見守る中、2回目の女神の祝福の音が聞こえ、見える場所で行われていた戦闘は、前線が移動し、どんどん遠くになっていってしまった。

「だ、大丈夫なのかな・・・・・・・・」

タコは見えなくなってしまったので、リレイズで起きていたGapuelが、とりあえず自分達のアライアンスの蘇生に取り掛かった。2,3名を蘇生して、衰弱待ちをしているとき、なんと・・・

「あ、帰ってきた」

黄色ネームでHPは満タン。元気いっぱいの「Lord of onzozo」がゆらりゆらりと通路を渡ってくるではないかいな!!!

「生きてる人、危ない!」

慌てて別の通路に移動し、タコが定位置に戻るのを待った。トラクタで死体を安全な場所に引きずり、蘇生を続けた。

「あのPT、負けちゃったのか・・・・・・・・」
「レイズあるのかな、してあげたら・・?」
「いや、白さんだけリレイズで起きてるみたい。衰弱待ちかな」

そんなこんなで、LBJの目の前に「Lord of onzozo」が黄色ネームで帰ってきたのである。

「リベンジ・・・・・・・する?」

誰かがつぶやいた。

「する!!!!!!」
「ちゃんと作戦練ろう!」
「薬いるね、一回戻って買ってくる」
「地味に暗闇、痛かった」
「前衛できる人、サポ白にしよう」
「目薬必要やね」
「後衛もサポ白で」

追加メンバーも数名いて、薬を取りに帰る者、競売にない薬は、材料を購入し、錬金術の達人、Kiryuのお手製で、その場で作成。追加メンバー、サポを変えにいったメンバー、薬を準備しにいってくれたメンバー、それぞれが焦らず、でも急いで行動した。結局、18名のフルアライアンスとなっていた。今度のテーマは

「取られちゃったら仕方ない。焦って挑んで後悔するのだけは、もうやめよう!」

だった。負けてしまったPTも、もちろんリベンジの準備をしている事だろう。慣れ、手際、何をとっても負けているかもしれないけど、人数だけはこっちのほうが揃っている。残ったメンバーで作戦を考え、「サポでケアルガも使える、PTの盾+防御&水耐性アップの為の吟遊詩人入り強化チーム」「歌での強化しすぎは危険!攻撃力ありすぎ柔らかチーム」「後方支援、魔道士チーム」の3PTに分け、どのWSを使い、範囲攻撃、及び魔法はどうやって止めるのか、作戦を練った。用意できるだけの薬品を準備し、MP回復の仕方も決め、唯一の白/召であるGapuelが、全PTにプロテア、真空の鎧、をかけて、いざ!リベンジすることとなった!

もう悔いはない!これで負けたら本望!そういう状態で、LBJはタコに殴りかかった。

作戦で決めたとおり、撃てる人全員で「スピリッツウィズイン」を叩き込む。
侍はTPをためたまま、範囲攻撃および魔法を止めまくる。
状態異常はすぐに回復。薬も惜しまない。

って言うか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

め ち ゃ く ち ゃ 余 裕 や ん ! (`・ω・´)

1回目の全滅がウソのように、タコのHPは見る見る減っていった。用意した薬品も、ほとんど使うことなく、あんなに痛かった範囲魔法も、ほとんどが詠唱中断し、LBJはアッサリ勝ててしまったのである。

「作戦って、大事だね〜・・・・・・・・」

そんなこんなで、大騒ぎの後、タコ討伐は終了した。大人気アイテム、クラーケンクラブはドロップしなかったけど、みんな大満足で、ニコニコだった。

使った食事代、薬品代は、アライアンス全員のワリカンにしよう、という事になって、ひとり1300Gの徴収となった。Porojrが一旦全て買い取り、みんなPorojrに1300Gを払う、という事になって、みんなでオンゾゾの討伐場所で、列を作って、経費を払った。なんだかオカシイ光景だった。

はじめての強敵討伐。興奮したり、唖然としたりの連続だったけど、とてもいい経験にもなり、楽しかった。今日のメンバーが集まれば、先日、チョコっと遊びにいって、チョコっと遭遇し、どんな敵なのかも知らずに軽い気持ちで挑み、サクっとやられてしまった、ランペールの奥の巨大樹のNMにも勝てるかも?!

世間を騒がせている、HNMと呼ばれる強敵達。珍しいものを落とす事が多いので、専用のLSに独占されている状態らしいけど、こうやって偶然会えた時には、是非また焦らず準備して、挑んでみたいな、と思った。(このタコはHNMなのかしらん?あまり知らないけど・・・)珍しいアイテムも、そりゃ欲しいけど、なによりみんなで考えて討伐する、っていうのが楽しいじゃない!

長時間の取り合いなんて、とてもじゃないけど参加できないので、人気のない、ただ強いだけのNMと戦って、強敵との戦いに慣れていけたらいいな、と思いながら、今日のチョロ・ログアウト。




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